マシュピは、パナマからエクアドルに続く「チョコ・ダリエン緑の回廊」という、生態系にとって非常に重要な地域に位置しています。特にマシュピを含むアンデスのチョコ地域(注:地名です。「コ」にアクセント⤴️)は、ユネスコが定めたエクアドル第七番目の生物圏保護区でもあります。指定に至るまで、地元の人たちのとてつもない努力がありました。
海岸地方とアンデス山脈に挟まれたこの地域は、インタグの西隣。インタグと同じように鉱山開発の脅威にさらされています。インタグと同様、鉱山開発反対運動に取り組んできました。そして様々なオルタナティブが生まれてきました。
チョコレートのプロジェクトはもちろんですが、単一栽培でないパームやしやパルミート(ハートオブパーム)用のやしの森林農法による生産、有機サトウキビの生産、森の学校、エコツーリズム、ロケットストーブ研究、汚水のバイオフィルター、種子の保存、地域で取れる食べ物を食べる工夫をするムーブメント、食べられる野草を探そう会の他などなど、この地域の人たちはたくさんのことに取り組んでいます。
そんな彼らがここ数年毎年開催しているのが「アンデス・チョコ・フェスティバル」。例年なら、もちろん集まって開催していますが、外出禁止令が出ているエクアドルですから、それは叶わず、今年は8月10〜20日の10日間にわたり、オンラインで開催されました。
(スペイン語サイトはこちら)
様々なテーマでディスカッションや事例報告がなされましたが、ここでは「食の主権(Soberanía Alimentaria)」分科会パネリストの一人、マシュピチョコレート・カカオ生産担当のアレハンドロさん(通称アレホ)の発言をシェアしたいと思います。
「食の主権」分科会で話すアレホさん
20年前、マシュピ地域ではほとんどの畑で単一栽培、慣行農業が行われていた。
環境保護運動を始めたけれど、保護のための保護ではなく、自分たちが生きるために森を守らなければと感じ、それには、森林農法を用いてフードフォレストを作ることだと感じた。
最初はユカ、パパイヤ、バナナなどのフルーツを育て始めた。でも、生の原材料を生産するだけでは、食べていくのは大変だった。そんなとき、エクアドル固有のカカオが廃れていってる事実を知り、地域固有の種を守りたいという思いで、カカオ栽培、チョコレート加工に取り組むようになった。
「食の主権」ー自然のサイクルに添って、食料を生産し、生産者やコミュニティが食の流通にも関わっていく動きをもっと広めるには、生産者どうし、自治体、学校、一般市民などが一体となって取り組んでいく必要がある。
写真:マシュピチョコレート工房の、消費者、生産者、自治体との協働の様子。
最後に、アレホさんは、話をこう結びました。
「地元で採れたものを尊重して、おいしく食べよう」
実は、アレホさんが分科会で発言したことは、私が何度も聞いてきた話でした。初めて農園にお邪魔した時も、日本のツーリストのみなさんと行った時も、私が農園にお邪魔しているときに学生さんたちがきた時も、彼らは、繰り返し繰り返し、「マシュピの想い」を人々に語りかけてきました。
苗木が成長し、枝を伸ばすように、食べられる木の種類が増え、農園に訪れる鳥が増えるように、少しずつ、でも確実に、美味しいチョコレートと「生きるために森を守る」運動は広がっています。
>>「食の主権」分科会の動画ご覧になりたい方(スペイン語)はこちら。
>>参考:キーワード「食の主権(Food Sovereignty)」(幸せ経済社会研究所サイト)。
動画:マシュピ農園の「食べられる森(フードフォレスト)」
>>マシュピクラフトチョコレートの注文はこちら!
和田彩子(ワダアヤ)
ナマケモノ倶楽部および株式会社ウィンドファームエクアドルスタッフ。1999年、第1回エクアドルツアーに参加、エクアドルの自然とその自然を守ろうとしている人々に感銘を受け、2002年より長期滞在中。
エクアドル環境保全郡コタカチ郡や有機生産者、手工芸品に取り組む女性グループ、コミュニティエコツーリズムの活動を日本に伝える傍ら、スローをキーワードに、5年半かけ、ソーラーシャワーやコンポストトイレを設置したストローベイルハウスを建設。家族で「有機農園クリキンディ」を営みながら、手作りの暮らしを模索中。三児の母。
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