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執筆者の写真ナマケモノ事務局

田んぼのある風景  いのゆり



いのゆりです。突然ですが、みなさん田んぼしてますか?

私が田んぼの楽しさを知ったのは、学生時代。大学の側にある舞岡公園で、ゼミやサークルの活動として、田んぼ体験をさせてもらったことがきっかけです。


卒業してからの数年は、援農などで、年に何度か関わる程度。その後、友人の農家さんに水管理はしてもらいつつ、一年通して自分たちで作業をする体験をしました。無事に収穫を迎え、自宅の一室に、パンパンに膨れたコンバイン袋7つが並んだときの、なんとも言えない達成感と、“これで一年、家族が生きていけるぞ!”という安心感は忘れられません。そして2年前から、夫婦で(いや、ほとんど夫がやりました)、小さな田んぼを一枚任されて、稲作にチャレンジしています。


1年目は、イノシシと台風にやられて、収量は予想の半分程度。「今年こそは!」と張り切って、去年の秋の収穫は、約3倍になりました。もちろん、自然相手のことなので、運もあったのですが、嬉しかったです。量が多いだけでなく、味もおいしくなって、発見もたくさんあって、いろいろな意味で実りのある田んぼ体験でした。



鹿児島は、地域によりますが、あまり水田での稲作に適した土地ではありません。温暖な気候による台風や害虫、雑草への対策に加え、火山の影響で水田が作りにくい地質の場所が多く、特に、私が今暮らしている地域は、かつて大和政権の支配下で稲作を強制されたために反乱があった、という説もあるほどです。この辺りは、縄文時代の出土品も多く、はるか昔から、何度となく自然災害や戦禍に見舞われながら、たくましく生きてきた人々の歴史を感じます。


一方、戦後の復興の中で、山を切り崩し海を埋め立てて農地を広げてきた経緯もあり、苦労して開拓したであろう田園風景を前に、「いっそ山林のままでよかったのでは?」という複雑な思いも湧いてきます。それでも「今の私は米がなければ生きていけないのだ!」と言い聞かせて、必死で草取りしたり水路の泥を掻き出したりしながら、楽しくお米づくりをしています。最近は、そんな田畑を埋め立てて、住宅やドラッグストアなどが乱立してきて、さらに複雑な気持ちです。まずはこの田園風景と里山を守っていきたいと思うところです。


毎年感動する稲の花

毎日現れるわが家の土鍋

さて、一年通しての作業、と言っても、この辺りでは、6月10日前後に田植え、11月10日前後に稲刈り、というのが通例です。4月ごろから始まる田おこし、畦や水路の整備などを含めても、水田の期間は半年ほど。


稲刈りが終わって一息ついたら、まずは収穫祭をして、それから冬の間は、田んぼの隅や畑で野菜を育てたり、柑橘類を採ったり、お餅をついたり、塩を炊いたり、山登りしたり。去年の年末は、自分たちの田んぼで育った稲藁で、お正月飾りを作りました。桜が咲く頃、田んぼはレンゲの絨毯になって、渡り鳥が楽しそうにしています。水の張っていない時期も、そんな豊かな日々の側に、田んぼがあります。


今年は、自分たちの田んぼに加えて、子どもたちの体験田んぼのサポートや、ご近所さんに誘われて一緒に作る三枚、うちのところも使っていいよと言われた山間の一枚など、関わる田んぼが増えてきて、嬉しいやら大変やら。今年もいろいろなドラマがありました。稲の花が咲くと、なぜか毎年、心が震えます。秋の収穫が楽しみです。


ハザ掛けは大変だけど楽しい



手作りのしめ縄。形はご愛嬌。

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1 Comment


Noriko Ishige
Noriko Ishige
Oct 26, 2023

国の経済政策を打ち出す国会でこれからの日本の行末を語るときに田畑が何よりも大切だということになったらと思います。田んぼで稲を育み自然の連環と共生する暮らしの中からしか生きていく醍醐味を味わえることはないのかもしれない気さえします、、そのような朗らかな日々の営みのあることを伝えていただくことの大切さを思います。ありがとうございます。都会で生きていくことを余儀なくされている者にとってはとても嬉しいことです。情景を感じながらこの風景を根絶させないために何ができるだろうかと思案しています。プラスチック新法により来年新年度から各自治体ではプラスチックの日が制定されるかと思います。せめて都会で暮らす人々がこの新法制定を機にできるだけごみにしかならないものを選択せず循環連環する命を根底に置いて、新たなごみ文化を創造する気概でこの新しい日をごみ文化ルネッサンス元年としてほしいです。

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