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執筆者の写真ワダアヤ

Earth-to-Bar Chocholate 和田彩子




こんにちは!在エクアドルナマケモノのワダアヤです。


ここエクアドルの季節は雨季。雨ばかりの毎日です。先日の大雨で近所の川が決壊し、上から流れてきた水がジャンプすれば越えられる程度だった小川の土を押し流し、幅3m深さ1mくらいの川になってしまいました。この大水で水道管が流され、2日ほど断水。でも雨水でお皿を洗ったり、洗濯をしたり、料理や飲料水には、パーマカルチャーの講習会で習ったフィルターで濾過したものを沸かして使ったりしてなんとかやり過ごすことができました。トイレはドライコンポストトイレなので、水を使わない。2日間水を買うことなく過ごせ、密かにガッツポーズをしました。


さて、前置きが長くなりましたが、日本の季節は冬、そしてバレンタインときたら、チョコレート。美味しいチョコレートになるカカオを育てているマシュピの話を少し。


マシュピというのは、エクアドルの北西部にある小さな村の名前です。この地域は、その降水量の多さ、太平洋と4000m級アンデス山脈双方の影響を受ける複雑なエコシステムゆえに「ネオ・トロピカル」と呼ばれ、この地域固有の自然を育んできました。国連認定のバイオスフィア保護区にも含まれているほどです。この地でアグスティーナ・アルコスさんとアレハンドロ・ソラーノさんカップルが、10年以上前に牧草地で劣化した土地に、地域の森を模倣する形で再生しながら、カカオを育てています。




カカオの種類は、第四のカカオと言われるカカオ・ナシオナル。エクアドルのみに生息する固有種で、甘い花のような香りをもち、ナッツのようなコクと苦みがあります。別名アリーバ。ちなみにアリーバ(arriba)というのはスペイン語で、「上」という意味です。スペイン人がアマゾン地方で美味しいカカオはどこにあると先住民の人に聞いたところ、「上の方、上の方(アリーバ、アリーバ)」と答えたから、とか。さらにいうと、定説では、カカオの起源は紀元前3000年のメキシコと言われていますが、近年、エクアドルの南部にある紀元前5500〜5300年の遺跡の中で発見された陶器の中にカカオの澱粉が発見されました。そういった意味でも、このカカオはエクアドルの貴重な自然のアイコン的な生産物と言えます。彼らはそれでカカオを育てることにしたのだそうです。




ここはカカオ農園ですが、他にも椰子の木、柑橘類の木、見たこともない果実がたくさん植っています。森林農法と呼ばれる、さまざまな種類、高さの木々をカカオと一緒に育てることによって、生態系の本来の豊かさを取り戻しつつ、現金収入の糧や、自分達の食物となる果樹を育てる農業を実践しています。高低差がある樹木が適度な日陰と作り、朽ちた木や葉が土壌の栄養になる。そこで育つ多種多様な花や果実などを求めて、生き物たちがやってくる。彼らが種を運んだり、受粉を促したり、害虫を食べてくれたりする。こうして育つカカオは、健康であるばかりでなく、周囲の花や果実の香りも吸いながら育つので、複雑な香りを持つカカオに成長します。もちろん、病気や獣害などと無縁ではないけれど、カカオの生育だけじゃない、生態系全部を見据えた、マシュピの自然がつまった、まさにEarth-to-Barなチョコレートなのです。

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